多くの人にとって、家づくりは一生で一回きりの体験であり、人生においてもっとも高額なお買いもののひとつになります。それだけに「失敗したくない」との思いが強くなり、一歩踏み出す勇気を持てない人も多いでしょう。
不安を払拭するには「家を建てる」といった漠然とした大きな目標を、より具体的な手順へと落とし込んでいくのがおすすめです。何から始め、どのように進めるといいのか、全体像を把握するとやるべきことが見えてきます。
今回は、理想の家を建てるためのファーストアクションから、より具体的な手順まで詳しく解説します。理想の家を建てるための参考にしてみてください。
まずは理想の住宅像を描こう
「家を建てたい」と漠然と思ってはいるものの、具体的にどのような家にしたいか形になっていない人も多いのではないでしょうか。
そのようなときには、まずは自分で情報を集めるのと同時に、友人や同僚、親戚などに相談するのがおすすめです。基本的な知識を得るのと平行し、いろいろな人の話を聞くことで「こんな家にしたい」という理想像が浮かび上がってきます。
住宅会社の事例集から理想の住宅を見つける
理想の住宅を考えるときには、インターネットで住宅会社が公開している施工事例をチェックするのがおすすめです。
たとえばInstagramやPinterest、TikTok、YouTubeなどのSNS上では、多くの工務店やハウスメーカーが自社の成功事例を掲載していたり、実際に家を建てた人が自分の家を紹介したりしています。その中から「こんな家に住んでみたい」「デザインがすてき」と感じた住宅をどんどんリストアップしていきましょう。
施工事例をチェックするには「住宅」「住宅デザイン」「施工事例」「新築住宅」などのハッシュタグやキーワードで検索するのがおすすめです。
家に求める優先順位を決めよう
理想の住宅を探すのと併せて、より具体的に「実現性」を検討するために、家に求める優先順位を決めていきます。
予算に上限がないのであれば、すべての理想を叶えられます。しかしそうでないなら、どこかで線引きが必要になるためです。家づくりにおいて、何を優先するのかを決めておくことはとても大切です。
ここでは、家づくりで検討すべきことを4つ紹介しますので、自分たちが優先するものは何なのかを考えておきましょう。
- ①大まかな予算を決めよう
- ②住みたい場所を選ぼう
- ③新築(注文・建売)か中古住宅かを検討しよう
- ④広さや間取りを大まかに決めよう
①大まかな予算を決めよう
家を建てるために、どれくらいの予算を充てられるのかは重要です。
予算を検討するときには、現在の自分たちの収入でいくら借りられるのか、「上限額」を気にする人がほとんどです。しかし長く返済し続けていくことを考えると、無理なく返せる「月々の返済額」を、将来のライフプランもあわせて検討する必要があります。借り入れできる具体的な金額を知りたい場合には、金融機関で住宅ローンの事前審査を受けると良いでしょう。
また将来何人家族になりそうなのか、子どもをどんな学校に通わせたいのか、などにより、返済シミュレーションは変わってきます。将来のライフプランもあわせて予算を考えるなら、銀行や住宅金融支援機構などの金融機関だけではなく、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもおすすめです。
②住みたい場所を選ぼう
住む場所は、勤務先に近い職住近接を優先するのか、趣味を優先するのか、など希望によっても選ぶエリアが異なってきます。
とくに近年は、働き方改革やコロナウイルス感染症拡大の影響などを受けてテレワークが普及しました。職種によっては、職場近くに住むことが必ずしも利便性が高いとはいえなくなりつつあります。また終身雇用制が崩壊した今、同じ企業に将来もずっと勤めるとは限りません。
子どもの学校を優先する考え方もありますが、子どもはいつか巣立っていくものです。そのため住む場所を選ぶときには「今」だけを点で捉えるのではなく、将来も踏まえて長い目で検討することが大切です。
③新築(注文・建売)か中古住宅かを検討しよう
マイホームといっても、注文住宅や建売といった新築住宅を購入するのか、中古住宅を選ぶのか、選択肢は複数あります。どのカテゴリーの住宅を希望するのか、まずはざっくりでいいので決めておきましょう。
最終的には予算や場所によって候補が絞られてきます。予算によっては、駅近を希望するなら必然的に中古住宅を選ぶことになるかもしれません。予算や場所とリンクさせ、まずは大まかに優先順位をつけておくといいでしょう。
④広さや間取りを大まかに決めよう
マイホームの購入を検討しはじめた段階で、具体的な間取りまで決めるのは難しいものです。そのためまずはInstagramやPinterestなどインターネットで集めた情報の中から「こんな間取りが理想」といったものをピックアップしておくだけで充分です。
広さについても、場所や予算によってある程度実現できる範囲は絞られてきます。基本的には同じ予算であるなら、駅近や都心に住宅を建てるなら狭くなり、駅や都心から離れるほど広い家を建てられます。総合的に、広さと利便性のどちらを優先するかを検討しておきましょう。
家を建てるときの具体的な16の手順と流れを把握しよう
理想と優先順位を考えたところで、続いては、家を建てるときの全体的な手順と流れを、以下の16のステップに分けて解説していきます。
【下準備】STEP①情報収集〜STEP⑤土地の売買契約まで
家を建てるためには、まずはどのような家を建てたいのか情報収集するのと平行し、土地探しを進めます。下準備にかかる期間は1ヵ月〜1年程度と、人によって異なります。
STEP①情報収集する
まずはどのような家を建てたいのか、インターネットで情報収集することから始めます。事例を集め、理想のデザインや間取りの希望を考えましょう。初期の段階で以下の2点を押さえておくと、設計事務所や工務店を選び相談するときにスムーズです。
- 事例集から理想のデザインや間取りをピックアップしておく
- 前章で紹介した4項目の優先順位をつけておく
<オンライン勉強会などに参加するのもおすすめ>
工務店や建築会社などが開催している、オンライン勉強会に参加するのも情報収集にはおすすめです。オンライン勉強会なら、顔出し不要で自宅から気軽に参加して家づくりについて詳しい話を聞くことができます。多くの工務店が「家づくり」「土地探し」などテーマを決めて勉強会を開催しているので、調べてみるのがおすすめです。
STEP②好みの住宅をデザインできる工務店を選ぶ
InstagramやPinterestで、興味のある工務店を数社ピックアップしましょう。ある程度自分の好みが固まっていると、絞り込みやすくなります。
工務店のホームページも訪問し、施工事例を確認すると同時に、どのようなコンセプトを持っているのかもチェックします。「スクラップ・アンド・ビルドからの脱却」「安全な建材を優先的に使用」など、見た目のデザインだけではなく、理念や考えに共感できる工務店を見つけると家づくりの満足度が高まります。
<工務店にカタログを請求する>
工務店を選ぶときには、サイトからカタログを請求するのもおすすめです。カタログには、ウェブだけでは分からない、会社の雰囲気や考え方などが詳しく記載されています。
また、カタログ請求後の対応には、それぞれの会社の差が出ます。請求してからの対応の早さや、カタログが届いたかの確認があったかなどもチェックしましょう。
こういった対応の良さは、仕事の丁寧さと密接に関係があります。気持ちのいい丁寧な対応をする会社は教育が行き届いているため、工事も丁寧に進めることが多く、高い工事品質が期待できます。
<完成見学会やイベントに参加する>
気になる工務店の、完成見学会やOB宅訪問といったイベントに参加するのもおすすめです。実際の住宅を見ることは、カタログやインターネット上で見るのとはまったく違います。
実物を見ると、工事の丁寧さや、その工務店が建てた住宅の持つ雰囲気や空気感を、リアルに体感できるのがメリットです。実際に住んでいる人の話を直接聞く機会をもらえれば、気になることや不安の解消にもつながります。
STEP③土地を探す
理想の家、そして、それを叶えてくれる工務店を検討するのと同時に、土地探しも進めます。
住宅用地を探すときには、不動産会社で土地だけを探してもらうより、工務店に理想の家と場所の条件や優先順位を伝えたうえで探してもらうのがスムーズです。
土地と家を切り離して検討すると「購入した土地にあわせて家を建てる」「土地を買った残りの予算で家を建てる」ことになりがちです。そうなると、理想の家を叶えられない可能性が高くなります。土地は家とセットで予算を考え、それぞれの優先順位から妥協点を探ったほうが、より満足度の高い結果になるのです。
もちろん不動産会社で理想的な土地が見つかる可能性もあるため、土地探しは不動産会社と工務店の両方で進めるといいでしょう。あわせてSUUMOやホームズなど、不動産・住宅のポータルサイトを活用するとより多くの情報を集められます。
STEP④仮契約し敷地・地盤調査を実施する
土地を決めたら仲介してくれる会社に買付証明書を提出し、仮契約を結びます。
仮契約後、敷地の方位や形状、高低差などを調査する「敷地調査」と、住宅を建てるのに適した地盤かを調べる「地盤調査」を行います。
STEP⑤土地の売買契約を結ぶ
土地が見つかったら、仲介会社から「重要事項の説明」を受け、売買契約を結びます。
売買契約に際しては、契約書にかかる印紙税や所有権移転登記する際に支払う登録免許税、10%程度の手付金などの諸費用が必要です。残代金に関しては、自己資金で支払う、ローンでまかなう場合には金融機関のつなぎ融資を利用するなど、状況に応じていろいろな方法があります。
【設計】STEP⑥プランヒアリング・設計計画〜STEP⑩建築確認交付まで
土地を購入したら、家を設計する段階に入り、工務店など住宅会社と請負契約を結びます。住宅ローンの手続きをし、自治体から建築確認交付を受けるまでにかかる期間は1〜3ヵ月程度です。
STEP⑥プランヒアリング・設計契約をする
土地を購入したら、その土地にどのような家を建てるのか、設計士からプランヒアリングを受けます。できるだけ詳細に希望を伝え、図面へと落とし込んでいってもらいましょう。
プラン提案は、複数の設計事務所や工務店に依頼するのがおすすめです。こちらが伝えた内容が、図面上で思ったとおりに表現されているかを比較して選ぶといいでしょう。
最終的なプランに納得がいったら、設計契約を結びます。この段階では、おおよそ10万〜25万円を「設計申し込み料」として支払うケースが一般的です。
STEP⑦工事請負契約を結ぶ
設計が決まったら、工務店と工事請負契約を結びます。工事請負契約では、どんな家を、いくらで、いつまでに建てるかを明確にします。
工事請負契約は、家を建てる一連の流れでもっとも重要な契約です。この契約を結んだあとでは、間取りの変更などは基本的にはできません。もし間取り変更を希望する場合には、新たに変更契約を結ぶ必要があるため注意しましょう。
仮にキャンセルする場合には、原則として契約金は返ってこないのが一般的です。そのため契約書の内容は隅々までチェックして、疑問点があれば納得するまで担当者に説明を求めることが大切です。
STEP⑧住宅ローンを申請・契約する
工事請負契約を結んだら、住宅ローンを申請します。
STEP⑤でも触れましたが、土地を先に購入する場合、住宅ローンを実行するまでの間に「つなぎ融資」を検討することがあります。住宅ローンはその名のとおり、住宅の購入に対するものであり、土地の購入には利用できないためです。つなぎ融資は、取り扱っていない金融機関もあるため、活用を希望するときには金融機関選びのときに条件としておく必要があります。
なお住宅ローンの審査には、事前審査と本審査がありますが、この段階では本審査を申し込みます。本審査では、以下のような書類を用意し、支払い能力の有無を判断してもらいます。
- 本人確認書類:住民票謄本
- 収入に関する書類:源泉徴収票や給与明細、確定申告書や納税証明書
- 物件に関する書類:不動産売買契約書、重要事項説明書、工事請負契約書、見積書など
必要な書類は金融機関によって異なるため、事前に問い合わせておくと確実に把握できます。
STEP⑨見積もり調整する
想定していた金額での融資が受けられなかったなど、資金計画に狂いが生じた場合は、見積もり内容と設計図を確認しながら、費用の調整や仕様の変更を行います。変更が発生したときには「変更契約」を結びます。
STEP⑩建築確認申請・確認済証の交付を受ける
見積もりを調整したら、自治体に建築確認を申請します。建築確認とは、家を建てる前に建築計画が建築基準に適合しているかをチェックする制度です。適合していると確認されれば「確認済証」が交付されます。
【工事】STEP⑪地鎮祭〜STEP⑬竣工・引き渡しまで
確認済証が交付されるといよいよ工事に入ります。工事中にはいろいろな行事が行われます。工事にかかる期間は、家の大きさやデザインなどで違いますが、3ヵ月〜6ヵ月程度が目安です。
STEP⑪地鎮祭を行う
確認済証が交付されると、着工できます。着工時には、施主やその家族、工務店の担当者、現場監督、設計者、大工の棟梁などの工事関係者が出席し、土地の守護神を祀り工事の安全を祈願する「地鎮祭」が行われます。
STEP⑫上棟式を行う
工事が進み、柱や梁(はり)を組み立てたあと、屋根のもっとも高い位置に「棟木(むなぎ)」と呼ばれる木材が取りつけられたら「上棟式」を行います。上棟式は、建物が無事完成することを願い、棟上げ(むねあげ)まで何事もなく進んだことを祝う式典です。
STEP⑬竣工(工事の完了)する
引き渡し1ヵ月ほど前になると、「竣工」と呼ばれる工事が完了した状態になります。工事が完了しても、そのまま引き渡してもらえるわけではなく、工事が当初の予定どおり進んだかなどを調べる「完了検査」が行われるのを待つ必要があります。
【完了】STEP⑭完了検査・引き渡し〜STEP⑯入居まで
工事が完了したら、自治体の完了検査を受けます。検査に合格したらローンが実行され、物件を引き渡してもらいます。完了検査〜入居までにかかる期間は1ヵ月程度です。
STEP⑭完了検査・引き渡しを受ける
工事が竣工(完了)すると、完了検査を受けます。検査に合格し、検査済証が交付されるまで、建物は使用できません。検査済証が交付されたら、物件を引き渡してもらいます。
STEP⑮表示登記・住宅ローンの融資を実行する
物件の引き渡しは、住宅ローンの融資実行日となるのが一般的です。融資実行日には、新居の表示登記(表題登記)も同時に行われます。
STEP⑯入居する
手続きが済めば、家の鍵や保証書などを受け取り、新居に引っ越し入居します。今後不具合が生じたときに備え、定期点検の時期や無料保証期間はいつまでかなど、アフターメンテナンスについて確認しておくと安心です。
まとめ
家を建てるためには、まずはどんな家を建てたいのか「理想像」を固め、自分たちの今後のライフプランも踏まえての優先順位を決めておくことが大切です。
情報収集には、インターネットを大いに活用しましょう。InstagramやPinterest、TikTok、YouTubeなどで好みの事例を集め、興味のある工務店が開催している勉強会などに参加するのがおすすめです。
それから具体的なステップを順番に踏んでいくと、家づくりをスムーズに進められます。今回の記事を、ぜひ理想の家づくりの参考にしてみてください。